お日様がポカポカと照っていました。暑すぎず寒すぎず、そよ風の気持ちいい秋です。

そんな日のある朝、カー君はふと思いました。

「僕はいつも田んぼに立って鳥さんたちを追い払っている。

でもたまには鳥さんと仲良くしたいな。」

そんなとき、一羽のすずめがカー君の元へとやってきました。

「おや、お前さんは人間かい。それともかかしかい。」

いつもならここで「人間」と答えるところですが、今日のカー君は少し違っていました。

「僕はかかしだよ。ねえすずめさん。僕と友達になってよ。」

すずめは目をパチクリとしました。

「こんなかかし今まで見たことがないよ。自分からかかしだって言って、しかも友達になろうなんて。」

「だめかい、すずめさん。」

カー君はもう一度尋ねました。

すずめは目を瞑っていましたが、やがてにやりと笑うとこう答えました。

「いいよ。友達になろう。でもね、ひとつ約束して欲しいんだ。」

「約束?どんな約束だい。僕にできることだったら何でもするよ。」

「なに、簡単なことだし、君にしかできないことさ。」

「僕のことはカー君って呼んでよ。」

「カー君?ああ、わかったよ。それでね・・・。」

「ねえ、僕はあなたのことをなんて呼んだらいい?」

「なんでもいいよ。それで・・・。」

「良くないよ。僕も名前がないときは大変だったんだから。かかしって呼ばれたら皆が返事して。」

昔、この田んぼにはもっとたくさんのかかしが立っていましたが、今はカー君を入れて二つか三つです。

田んぼは昔の半分の広さもありませんでした。

「そうかい。じゃあすずめさんっていうのはどうだい。」

「すずめさんだね。いい名前だ。」

カー君ははじめての鳥の友達の名前が分かってうれしくなりました。

「じゃあカー君。さっきのお願いのことなんだけどね、私たちを脅かさないで欲しいんだ。」

「脅かさない?」

「そう。私たち鳥が稲を食べにきても人間だなんて言わないでおくれ。私たちは目が悪いからカー君と

人間の区別がつかないんだよ。」

「でも・・・。」

鳥を追い払うのはカー君の昔からのたった一つの仕事です。それをやめろと言われるのはカー君に

とってとてもつらいことでした。

「嫌ならいいんだよ。そのかわり、友達にはなれないね。」

「待って!うん、わかった。僕、すずめさんたちを脅かさないよ。」

「すずめだけじゃなくてカラスもハトも皆だよ。」

「うん、わかった。そのかわり友達になってね。」

「ああ、私たちは友達だよ。」



次の日からカー君は鳥が来ても脅かさなくなりました。

カー君のいる田んぼにだけ、いっぱい鳥が集まってきます。

たわわに実った稲が次々と食べられていきます。

カー君はいっぱいいる鳥の中から昨日のすずめを見つけました。

「すずめさん、こんにちは。」

「ああ、こんにちは。」

すずめはちょこちょことカー君のところへやってきました。

その時です。

「こらー、なにをしとるかー。」

突然大きな声が聞こえてきました。鳥たちはいっせいに逃げていきます。

鳥たちが行ってしまった後、残っていたのはカー君だけでした。

「なんてことをするの。」

実は大きな声を出したのは隣の田んぼにいるカシ君でした。

「皆いっちゃったじゃないか。僕の友達になんてことをするんだよ。」

カー君はとてもとても怒っていました。カシ君は一言だけつぶやきました。

「本当に友達なのかい。」



次の日。鳥たちは来ませんでした。

カー君は悩んでいました。

「すずめさんたちは本当に僕の友達だ。だけど・・・あんまり楽しくなかったな。」

友達と言うのは一緒に居ると楽しいのもだと聞いていたのでそこが少し気になります。

「でもすずめさんは友達だって言ってくれたんだもん。友達だよ。」



そのまた次の日。カー君は田んぼにはいませんでした。稲を全部食べられていたので怒った人間が

カー君を捨ててしまったのです。

そこにはこんどは大きな目玉の模様をした布が立てられました。残っていたかかしもついでで捨てら

れてしまいました。

鳥たちはもう二度とこの田んぼには来ませんでした。