眠るとき、少女はいつも僕を抱きしめる。

お風呂上りのしるしともいえるシャンプーの香りが

僕の鼻をかすめる。

この香りをかぐと一日が終わるのだと思う。

そう、人間の一日が。

また朝がやってくる。

すると僕はまた一人だ。

あの少女が戻ってきて僕を抱きしめてくれるまで

僕は待ち続ける。

チッチッチッ。

部屋の中にある大量の目覚まし時計たちが

それぞれに自分の信じる時を刻んでいく。

彼らもまた一日に一度だけ働く。

僕と同じように少女の生活に溶け込む。

しかし最近はそんなことも減ってきた。

今年の冬ある少年がやってきた。

そいつはここに住みつき少女の心を奪っていった。

少女が眠るとき、

彼女の腕の中には奴がいる。

僕の目の前で奴と少女はともに眠る。

朝起きるとき、

もうあの音はいらない。

奴が彼女の耳元で「おはよう。」と囁くだけだ。

時がすぎる。

少女が僕を抱きしめる日を待ち続ける。

何日も何日も待ち続ける。

わかっていた。

少女の心がもう戻ってこないこと。

僕がだんだん少女の生活から部屋の風景に

溶け込む先が変わっていっていること。

それでも僕は待ち続ける。

だんだんと白く霞んでいく視界の中、

今も少女を見つめ続ける。

「けろぴー」と呼ばれるその時を。


あとがき・・・思ったことを書いただけ。
        けろぴーはカエルのぬいぐるみ。