カタツムリが紫陽花の上を這いずり回る。
ノロノロ。ノロノロ。
雨上がりの紫陽花は、キラキラと眩しい。
制服はもう夏服への移行を終えていた。
一人、家路につく。
ここ最近、なぜか風子とすれ違っている気がする。
会えないわけではないが、会っている時間は着実に短くなっている。
「はぁ」なんてため息をつく。
なんだか、らしくない。
雨上がりの空気は、どんよりと重く、肌にまとわり付く。
じめじめ。
「――――――」
声が聞こえた。
聞こえた気がした。
ベクトルはこちらに向かっていたが、風の悪戯かもしれない。
もし用があるならばまた声をかけられるだろう。
今はそんなことにかまっていられない。
頭の中で風子がおしくらまんじゅうをしている。
これが世に言う「ヒトデ祭り」だろうか。

瞬間。

俺は後ろを振り返っていた。
本能が告げた―――とでも言おうか。
予定通りの進路からは少しずれる形で振り返る。
そこには長い髪の少女が英和辞書を片手に立っていた。
揺れる藤色。
「あれ?」
何事もなかったかのように手を下ろす。
「ちょっとあんた、聞こえてるなら返事くらいしなさいよ」
下手な言い訳はここでは血の惨劇を招くだけだろうと判断。
「呼ぶならもっとはっきり呼べよ」なんて言おうものならその手の辞書が宙を舞うのは明らかだ。
「いや、考え事しててな」
トコトコと隣に並ぶ少女。
「あんたが?」
「なんだよその顔」
「なによ。あたしの顔に文句でもあるの」
辞書はまだ手の中に。
「・・・・・・」
「で、なに悩んでたのよ」
「考え事」
「同じ」
気兼ねなく話しかけてくれる杏の存在は確かに俺にとって数少ない友人と呼べる一人だ。
・・・相談してみるべきか。
いや、やめよう。
どうせ馬鹿にされるのがオチだ。
「なんでもねえよ」
「あ、そ。ならいいけど」
そのまま言葉がなくなる。
軽い沈黙の中並んで歩く。
思えば杏と並んで帰るなんて初めてのことだった。
「朋也」
そのまましばらく歩いて、不意に杏は立ち止まった。
「ん」
振り向く。
「一応言っとくわ」
「なにを」
突然話しかけてきたかと思えば、意味がわからない。
杏がまた歩き始める。
「噂なんだけどね」
こちらの問いに答える気はないらしい。
おとなしく聞き手に回る。
「風子さ」
ビクリとした。
突如風子の名前が出てきたから。
しかも意外すぎる人物から。
「最近どう」
「どうって・・・」
変わらないよ。とは答えがたいものがある。
「別に」
「・・・そう」
なんか、嫌な間だ。
「風子がどうかしたのか」
「まあね」
杏にしては不思議なくらいの歯切れの悪さだ。
「なんだよ」
「うん。ま、あくまで噂だしね」
うんうんと勝手に納得している。
「噂なんだけど」
「ああ」
「風子、この間金髪の男と町を歩いてたんだって」
景色がとんだ。


気が付いたときには、家のベッドの上に寝転がっていた。
あの後―――あの後どうなったのか、思い出そうと試みる。
しかし靄のかかった頭は杏のセリフをますます曇らせるだけ。

「風子ちゃん。この間金髪の男と町を歩いてたんだって」

杏の煮え切らなさを考えると、それはただ歩いていた、という意味ではないのだろう。
「金髪」
うちの学校で金髪といえばやつしかいない。
もちろんうちの学校の人間でないということも考えられるが。
ともあれ俺が金髪と聞いて浮かぶのはあいつの顔だけだ。
「春原」
そっと口に出す。
「あはは」
「ぐへぇ」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
笑う春原。
顔がひしゃげる春原。
ラグビー部と戯れる春原。
いろいろな春原が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返す。
最後の春原は消えたまま浮かんでこなかった。
「・・・ちっ」
なんでもないんだと思いながらも、胸の針は抜けない。
あくまで噂だ。
噂なんて、噂でしかない。
春原にそんなことはできないと思いつつも、心のどこかで風子を疑っているから胸が痛いのだ。
自分の弱さがゴミにしか見えない。
なんてことはない、明日風子に聞けばいい。
そうだ、それだけのことだ。
目を閉じる。
授業中眠るスキルなんて、全然使えないのだと知った。


いつもより低い太陽。
黙々と教室を目指した。
結局昨夜はほとんど眠れなかった。
寝付いても、すぐに目が覚める。
それの繰り返し。
寝不足なはずなのに眠くなく。
眠くないはずなのにとてもつらかった。
いつもより少し早めの登校。
道路は多くの生徒でにぎわっている。
学校中の生徒が登校しても道がつまらないのはなるほどこういう理由のようだ。
校門に差し掛かる。
教室へと向かうため、生徒の流れにのるが、ふと考えが頭をよぎった。
流れから無理矢理に逃げだす。
教室で待つにも風子のクラスで上級生が一人鎮座するのも雰囲気が悪い。
かといって風子がうちのクラスに必ず来るとも限らない。
だとすれば。
皆が必ず通る校門での待ち伏せは有効な手段だと思いついた。

笑顔が怠顔が寝顔が凛顔が。
あふれては流れあふれては流れ、坂の上のものへと吸い上げられていく。
近くにいた少女が待ち人を見つけたのか、流れに加わる。
そしてすぐに見えなくなる。
この中から風子を見つけられるのか、少し不安になった。
「おはようございます、朋也くん」
流れが一つ止まった。
「おっす」
「違うの、朝はおはようございますなの」
「ああ、おはよう」
「ちなみにGood morningは英語、Guten Morgenはドイツ・・・」
「だぁ、朝から勉強なんてさせるな」
それでなくても頭がいっぱいいっぱいなのに。
「朋也くんは、ここでなにをしてるの?」
「人を待ってるんだ」
「・・・お待たせしました」
「違う」
「・・・ううん、私も今来たところ」
「そういう意味じゃなくて」
「誰を待ってるの?」
「風子だよ」
「風子ちゃん?」
「ああ」
こうしてことみと話している間も、人の波はうねり続ける。
「ちょっと朝一番で用事があってな」
ことみはすごく不思議な表情を浮かべたまま立っていた。
しかし特に気にすることもないのでまた人の流れに目を向ける。
風子がいても気付かないかもしれない。
風子は背が低いからこういう時に不便である。
「朋也くん」
しばらくすると、ことみのほうから話しかけてきた。
「なんだ、まだいたのか。先に行っていいぞ」
「えっとね」
「何か用か」
「朋也くん、放課後までいるの?」
ずいぶんと不思議なことを言われた。
「???」
「えっとね、放課後まで待つの?」
よく、分からない。
「は?」
「風子ちゃん、私が朋也くんと話している間に行っちゃったの」
・・・すれ違うときはとことんすれ違うように、世の中できているようだった。


放課後。
結局昼休みには風子に会うことは出来なかった。
春原も今日は自主欠席のようだ。
この時期に一つだけ空いた机。
その隣の机に座り1日を過ごした。
寝不足のせいか、時々意識が飛ぶ。
なんか妙に悔しい。
昨夜は眠れなかったくせに、今は眠ってしまう自分の神経が悔しい。
風子に、会いに行こう。

―――そんなときだった―――

「あ、あの」
見上げるとそこには双子の片割れ。
一瞬だけ、昨日の放課後がフラッシュバック。
藤林は相変わらずおどおどしていた。
「岡崎くん」
「なんだよ藤林」
「あ、あのね、その・・・」
「なんだよ、今忙しいんだ、早くしてくれ。大した用じゃないならいくぜ」
「あ、待って。ちょっとだけでいいから」
「だからなんだよ」
早く風子の教室まで行かなくては、すれ違う可能性が高くなる。
「うん。あのね。岡崎くん、最近なんかおかしなことないかな」
「おかしなこと?」
「うん。あ、えと、その、物がなくなってるとかとにかく何かおかしなこと」
「別に。なんで」
「え?」
「なんで藤林が突然そんなこと言うんだ」
「え、あ、その、、、占い。占いでそういうのが出たから・・・」
藤林の占い。
知る人ぞ知る、当たらない占い。
「なら大丈夫だろう」
「え?」
「いや。じゃあ、俺もう行くから」
「あ、うん。さようなら」
「じゃあな」
最後の言葉は藤林の耳には届いていなかったかもしれない。
俺は早足で風子の教室へと向かった。

教室にはもう、風子の姿はなかった。


見慣れた部屋には、見慣れた金髪は見えなかった。
春原の部屋。
ゴミやら漫画やらが散乱している。
布団もめくってみたし、ダンボールの中も見てみたが春原の姿はどこにもなかった。
「ちっ」
知らず舌がはねる。
すれ違う。すれ違う。
まるで見えない誰かに遊ばれているよう。
「なにいらだってるんだかねぇ」
入り口から声が飛んできた。
腰に手を当ててこちらを眺めている。
「別に。なんでもないっすよ」
「そうかい。ま、別にあたしの知ったことじゃないんだけどね」
でもね、と美佐枝さんは続ける。
「何か悩みがあるんだったら人に相談してみるっていうのもありだよ」
「・・・・・・」
「ま、ただのおせっかいだから気にしない。春原待つのかい」
鍵を目の高さで軽く振っている。
「・・・いや」
手に持っていた雑誌をベッドの上に投げ捨てると、美佐枝さんの横を通り抜けた。
美佐枝さん。
頼りになる、寮母さん。
横を、すり抜けた。


風子の家を訪ねる度胸もなく、当てもなく街の中をふらつく。
時折金髪の男を見かけてはハッと振り向くが、無駄足に終わることばかり。
外はまだ明るい。
風子は今頃どこかで春原と肩を並べているのだろうか。
首を横に振る。
そんな証拠どこにもない。
あるのは、風子が金髪の男と歩いていたという噂。
そう、噂だ。あくまでも噂。
そこに最近の風子とのすれ違いを重ねるのはよくないことだ。
始終風子とベッタリというわけにもいかないだろう。
会える時間が減ってゆき、たまたま出会えない日が続いただけ。
それだけのこと。
それだけのこと?
そう、それだけのことだ。
またもや視界の隅に金髪が映る。
しかし今度は振り向かない。
振り向くまいと心に決める。
「あれー岡崎じゃん、ふべっ」
声が聞こえた瞬間、反射的に回し蹴りを放っていた。
白いアイスがアスファルトに突き刺さっている。
「いてぇな、なにすんだよ!」
「春原てめぇ今までなにしてやがった!」
胸倉をつかみあげる。
しかし相手も黙ってはいない。
「なんだよっ」
強引に腕を振り払われる。
見詰め合う。にらみ合う。
「いきなり蹴りつけておいてなんだよ岡崎」
「うるせぇ。いいから今までなにしてやがった」
「そんなのどうでもいいだろ」
「誰と一緒にいた、あぁ」
わけわかんねぇよ、と春原が殴りかかってきた。
くっと身構えた瞬間―――
「おい」
春原の体が空を舞っていた。
「こんなところで喧嘩はよくない。お店に迷惑だ」
クマ。
クマのぬいぐるみを片手に立つ、銀狼。
「ほら、私が仲裁してやるからさっさと謝れ春原」
「なんで俺なんだよっ!」
持ち前のスキル「不死身・回復特大」により春原が起き上がり喚く。
「お前が岡崎に殴りかかっていただろうが。まあ確かに喧嘩両成敗か。岡崎も謝れ」
「ゴメン」
「今の超適当だよね」
「ほら、次はお前の番だ春原」
「僕は悪くないね」
「まったく、お前というやつは。岡崎すまなかったな」
「いや、気にしてねぇよ」
「だから僕は悪くないですから!」


「だそうだ」
智代を仲介として、春原を問い詰めた。
風子が今どこにいるのかと。
「はぁん、それで僕にいきなり蹴りかかってきたわけか」
「・・・・・・」
「まったく、こっちの身にもなってほしいものだよね。身に覚えのないことでいきなり蹴られるなんてさ」
「・・・・・・」
「まあ僕は心の広い男だから特別に許してあげるけどね」
「・・・・・・」
「って、ぜんぜん聞いてないみたいだよね」
「岡崎」
智代の声に顔を上げた。
「岡崎は今、すごく苦しいんだと思う。でもな、だからといって周りに当たってはいけない。わかるな」
「ああ、すまなかったな」
偶然の積み重ねだと思ったところだったのに。
いや、思おうとしたところだったのに。
・・・思おうとしたところだったから、体が反射的に動いてしまったのか。
「しかし少し考えれば春原と風子が一緒にいることなどないとわかっただろうに」
「まあな、どうかしてるんだよ」
「今さらりとひどいこと言われてなかったかな」
「だいたいおまえが金髪なのが悪い」
「それ絶対おかしいですよね!」
「これからどうするんだ、岡崎」
「しらねぇ。もう少し探すさ」
「ふむ、私も手伝えればよかったのだが。生憎買い物の途中なんだ」
「買い物?」
自然と智代の手にあるクマのぬいぐるみに目がいく。
「ははっ、智代ちゃんにはまず似合わないもんね。でも何で包んでな、げふぁっ」
春原が地面にめり込む。
・・・踵落としか。直撃だったな。
「は!」
そして見る見る智代も落ち込んでいく。
「なに落ち込んでるんだよ」
「私は・・・。またすぐに暴力に走ってしまった。これではお前らのことなど言えないではないか」
「そうだな」
「岡崎」
急に真剣な表情の智代に見つめられる。
「な、なんだよ」
「かわいいか」
180度転換した話題においていかれる。
「・・・は?」
「だから、かわいいかと聞いている。女の子らしいだろ」
「なにが」
「これに決まっている」
智代の手には、クマ。
「女の子はぬいぐるみが好きなんだぞ」
ふふんと胸を張る智代。
「とても女の子らしいだろ」
「お前いくつだよ」


ズサッ。
足を止めた。
目の前の光景に足が止まった。
金髪と紫色のリボン。
それが前景の一つにあった。
並んで歩く金髪とリボン。
歩みが再び。
ゆっくりと、同じ速度で。
街を巡って、もう一度智代とすれ違って。
そんな帰り道。
目の前の、二人。
金髪がリボンに何かを話しかけている。
俺は、近づけなかった。
一定の距離を保ち、それでも離れることも出来なかった。
現実を受け入れたくない。
春原だったら、怒れた。
でも目の前の人物は春原ではない。
視界から二人以外が消える。
視界の中の二人以外がすべて風景となる。
クラリと上体が慣性で流れる。
二人の距離は離れず、二人の距離が離れていく。
よく分からなかった。
自分で自分が分からなかった。
俺は、風子を見つけて何がしたかったのだろう。
最初は噂が嘘だと確認したかったから。
それがだんだん、風子と会えないことからだんだん、自分の中で確かなものになっていってしまって。
春原だと思い込んで、春原を見つけて殴り飛ばそうと思って。
そして。
そして・・・。
俺は、この光景を予感していたのだろうか。
そんなことはないと信じていたなどということは言えない。
風子を疑っていた。

おれから はなれて いったのではないか と。

そして俺は。
この光景を実際に目の当たりにして。
なくなった。
なにもかもが。
自分さえも。

からっぽ。

からっぽの自分。
からっぽの自分は、消えよう。
二人から、風子から、去ろう。


光が消えた。
刹那、光がともった。


陽が沈み、街灯がついた。
リボンの結び目が見えなくなった。
「あ」
シュンと二つの大きな瞳に射られる。
街灯の灯かりに照らされた俺へと、風子がトタトタと駆けてきた。
後ろを向いて駆け出そう、逃げ出そう、逃げ出したい、逃げさせてくれ!!!
実際にはなにもできない自分。
「朋也さんです」
「よう、奇遇だな。俺帰るところだったんだよ。びっくりしたぜ。それじゃあな」
呆気にとられる風子をよそに、歩を進めた。
声とともに自分を押し出す。
進め、進め、進め。
「あれ〜、朋也クンじゃないか〜」
金髪の横を通り過ぎるとき、そんな聞き覚えのある声がした。


「杏ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!」
「なにようるさいわね」
「殺す、絶対に殺す!」
「あんたバカ?とりあえず近所迷惑だから外行きましょ、外」
確かにここは狭すぎる。
怒りのもとは恥ずかしさ。
分かってはいるが、それでも何もせずにいられようか。
なんとか自分を抑えつつ、中庭へと向かう。
朝の中庭には。
「プピ」
ボタンしかいなかった。
「これで邪魔者はいないな」
「そうね〜。あたしとしては楽しめたから、勝負してあげてもいいわよ」
クククと笑う顔がさらにむかつく。
「しかしまさかあんたがあそこまでおかしくなるとはあたしも思わなかったわ」
「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
にへらと笑う顔に、怒りよりも恥ずかしさがこみ上げる。
「ボタンもみたよねぇ。こいつどんどんおかしくなって、バカじゃないの」
「プピ」
ギロリと睨むと、ボタンは杏の腕へと飛び込んだ。
「あんた、ボタンになにする気」
「お前が俺にしたことよりはマシだ」
「あたしは噂としか言ってないじゃない。しかも事実だし」
「うるさい!!!」
へへへと笑う顔にもう耐えられそうにない。

結局は、杏に遊ばれただけだった。
勝平が椋に対するお礼の気持ちでプレゼントを贈ろうと考え、杏に相談をしたらしい。
そこで杏は風子を紹介。
俺で遊ぼうと考えたというのが大筋。

「だいたいあんたが風子を信じれなかったのがいけないんでしょう」
「っ―――」
言い返せない。
「風子をそんな風に見てたんだ、ふぅん」
ボタンまでが笑っているように見えてきた。
もうだめそうだ。
「とにかく一回しばかせろ!」
杏の表情に耐えられなくなったそのとき。
「朋也さんです」
背後の声に止められた。
ニヤニヤと笑う杏。
こいつ、気付いてやがった。
「こんなところでどうしたんですか?」
「朋也に告白されそうになってたのよ」
「そうなんですか」
「そうそう」
「黙れ」
目を丸くする風子、ニタニタと笑う杏、もう顔が真っ赤に違いない俺。
「大丈夫です、朋也さんはヒトデも大好きですから」
ニコリと笑う風子、最悪なにやけ顔の杏、逃げたくて仕方がない俺。
「はいはい、じゃああたしは戻るわ〜」
「カッペーにきゅうりあげてください」
「椋にいっとくわ〜」
ボタンを降ろし、今日は中庭から去っていった。
「きゅうりってなんだ」
「カッペーにはきゅうりをあげないと死んでしまうそうです」
「それいろいろと違うからな」
「朋也さん、こんなところでどうしたんですか」
「風子を待ってたんだよ」
「わぁ、それはぷちうれしいです」
「ぷちなんだな」
「杏さんもいました。だからぷちです」
「・・・・・・」
「でもうれしいです」
「放課後どっかいくか」
「風子遊園地とか嫌いじゃないです」
「妙な言い回し覚えたな」
「ゲームで言ってました。剣がかっこよかったです」
二人で、歩き始める。
教室までの道を。
二人違う、二人同じ道のりを。