カランカラン。
喫茶店の扉が開いた。
国体の開かれた運動公園沿いの県道に面した場所にあるその喫茶店は、私立大学の近くと言うこともあり、時間帯によっては客の大半を学生が占める。
今日も席には四組ほどの客が腰をかけていた。
照度を落とした照明の中で、入口から見て右側にあるパソコンの画面の白い光がやけにまぶしい。
その反対側。
大きな本棚の隣の席に、その二人は腰かけていた。
桜坂純子と刈谷学。
二人とも学部は違えど、同じ私立大学の学生である。
純子は文学部の二回生、学は経済学部の二回生。
二人は同じサークルに所属しており、また学部棟が近いこともあって、自然と話す回数が増えた。
その結果、今ではたまに二人で近くの喫茶店で話をすることができる程度には仲良くなっていた。

「そもそもさ、男と女が二人で一緒に泊ったからって、それがなんだっていうのよ。」
「そうそう。別に襲わねーし。」
「襲えないだけでしょ。」
「ちげーよ。別になんもねーし。」
「まあ、わかる。なんもないもんね。」
「そうそう。」
11月後半。風が冷たい。
大学の中央通りのイチョウ並木も、軒並み葉を落としていた。
インフルエンザの流行がニュースで流れていることもあって、二人はサークル棟から逃げ出してきたのだった。
そんなところではできない話をしたいというのが本当の理由なのだが。
「で。」
「で?」
「どうしたん。」
「どうもしないよ。」
「どうも?」
「どうも。」
「何、わからん。」
「えー、わかれよ。そういうことだよ。」
「へー。」
話を要約すると、つい先日、二人と同じサークルの遠野明が純子の部屋に泊ったらしい。
別段二人の間に何かあったわけではなく、サークル棟で活動に熱中するあまり、明の終電がなくなったためだそうだ。
「純、はじまったな。」
「おうよ、私はじまった。」
「おめでとう。お祝いにうまい棒やるわ。」
「よっしゃ。この後生協な。」
ちなみに純子はベッドで就寝、明は床で寝たらしい。
純子と学の二人にとって、恋と愛はそれぞれ中東の戦争に次ぐ縁遠い言葉であった。
「で、学くんはどうしたのさ。」
「俺かー。」
「箱では話にくかった?」
「うんまあそれもある。」
純子を外に連れ出したのは学の方だった。
サークル棟、通称「箱」にこだまする数多の咳から逃げようという話でそこから抜け出してきたのだ。
「いやね、うーん。あのね。」
「うん。」
「・・・夜野さんに、告られた。」
「えー!まじで!」
「まじだよまじなんだよ!」
「よっしゃ、きたこれ、私はうれしいよ!そうかーついに学くんも彼女持ちかやるなこの。」
「持たねえよ。」
「え?」
「持ちません。」
「え・・・。えー!なんで、ばっかじゃないの。なんでなんで。」
「うん。」
「・・・うん。」
「いやさ、夜野さんのこと好きだけどさ、ちげーよ、馬鹿って感じ。」
「どんな感じさ。」
「好きだけど、そういう好きじゃないし。むしろ友達みたいな感じだし。」
「あーわかる。なんか先輩っぽくないもんね。」
「うん。」
「で、困ってる。」
「そうかー。」
「そうなんだわ。」
「え、返事は保留ってこと?」
「いや、特に彼女が欲しいとか思ってないですって言った。」
「うんうん、そっか、なるほどね。」
ありがとうございます、と奥のカウンターで声がした。
客の一人が店を出るようだ。
ケーキと飲み物で1000円ちょっと。
リュックを背負ったこの男も、おそらくは同じ大学の学生だろうなと純子は頭の片隅で考えた。
それも一瞬のこと。
学への質問を、再構築する。
「で、今はどうなってるの。」
「それなんですよ。」
「うん。」
「俺、どうしたらいいと思う。」
「しらねーよ。しるわけねーよ。」
「顔合わせあずらいよな。」
「まーね。」
「はー。箱行きにくいと、行く場所ねーや。」
「そうだね。」
「そういや、そっちはどうなの。」
「ん?あー、まずまず。締め切りちょっと前には仕上げるつもりだけどね。」
「そっか。」
「そっちは?」
「んー、まずまず。まあ、なんとかするよ。」
「そっかぁ。」
なんとなく、天井を見上げる。
天井の梁の作りを覚えようとして、脳内で描写して、諦めた。三秒。
「そっかぁ。」
目の前の学は机の一点を見つめている。
木でできたその机は、文字通り木目だった。
節が黒くなっており、きっとそこを見ているのだろう。意味もなく。
「まあ、だったら普通に接すればいいんじゃない。学くんは、仲良くしたいんでしょ。」
「うん。」
「だったら夜野さんはちょっと辛いかもしれないけど、もう普通に過ごすしかないって。そのうちまた話せるようになるよ。」
「そうだね。」
学は眼を閉じた。
考えているふりをする。頭の中はドブ川のよう。重いヘドロが停滞して、思考は一切進まなかった。
「うん。・・・そろそろ行く?」
「早いな。もうこんな時間か。」
「次はどこ?学部?」
「いや、教養。」
「そか。行くか。」
「そうだね。」
重たいため息を落として立ち上がる。重たい重たいため息。なのに体はちっとも軽くならなかった。
「ま、またなんかあったら教えてよ。聞いてあげる。」
「うん、よろしくお願いします。」
ご一緒ですか。
はい、じゃあ1000円ね。
どうも。
はい。
じゃあ、50円のお返し。
ありがとうございました。



一週間後。
同じテーブルに再び同じ二人が座っていた。
外は一週間前と同じ快晴。
ただ、風が強くなっており、その分体感温度は下がっている。
自転車で走る人々は、コートが手放せないようだ。

「続いてるんだ。」
「続いてるんだ。」
「へー。」
「なんだよ、なんにもないよ。」
「わかってるよ。」
「うん。」
「ま、そろそろ佳境だしな。」
「そうだねー。予定していた締め切り延ばさないとだめっぽいよ。」
「まだみんな?」
「うん、みんな。」
「そっか。」
「今ちょっとほっとしたでしょ。」
「違うよ。急がないといけないなーって。」
「ふーん。」
カチカチとマウスをクリックする音。
三台並んだパソコン。店の一番奥に位置する席で、一人の眼鏡の若者がマウスをたたく。
どうやら操作に慣れていないようだ。いまどき珍しい。
「それでだよ。」
「うん。・・・そーだね。」
「どしたの。」
「うん、まぁ、メールに書いた感じなんだけど。」
「うん。見た見た。」
「やっぱり、あんまりよくないよね。」
「まあ、あんまりよくないんじゃないかな。」
「やっぱり、そう思う?」
「やっぱりそう思うよ。」
「そっか。だよね。」
「うん。」
まあ。
「おいしかったけどね。」
「うん。」
「・・・どうした、沈黙しすぎだろう。」
「あ、うん、ごめん。」
「いや、いいけどさぁ。」
「うん。」
歯切れが悪いなぁ。本当に。
ただ、純子も自分がそんな話をすることになったら、同じくらい歯切れは悪くなると思う。
それが、誰に対して話すときであっても。
ふと、学の前に置かれたケーキに目がとまる。
そういえば。
「こないだもショコラじゃなかった?」
「ん?あー、こないだはチョコケーキ。」
「チョコ好きなんだ。」
「まあね。チーズも好きだから悩んだけど、今はチョコの気分。」
「もしかして、だからチョコケーキだったの?」
「なのかなぁ。だよなぁ。そう思うよなぁ。」
「うん。」
「俺もそうなのかなぁと思いながら、でもそんなこと聞けないし、普通にうれしいし、おいしかったし。」
「同じケーキだったの?」
「うん、けど、チョコレートの板が乗ってた。誕生日とかに乗ってるやつ。」
「特製じゃん。」
「そうなんだよ。」
「なんて?」
「ん?」
「何か書いてあったんでしょ。」
「ああ、まあ。」
「なんて書いてあったのか吐いちまいな。」
「うん。おいしいよって。」
「うっわ、ぺっぺっ。」
「うるせえ、黙れ。」
「きもいわ。いや、夜野さんがじゃなくて、なんかそのリア充な感じが。」
「ちげーよ!リア充じゃねーよ。」
「リア充だろー。まあ、いいか。で、学くんはそれもうけとっちゃったってわけね。」
「うけとっちゃいました。」
「そういう特別なのとかは貰わない方がいいんじゃない。」
「うん、まあそうは思うわ。」
「うん。・・・。なんかさ、きっと期待しちゃうと思うんだよ。」
「うん。」
「箱でみんなと一緒に食べるのはいいと思うんだけどね。」
「うん。」
「うん。」
「うん。だねー。」
学だって分かっていた。
ただ、断る理由がない。
別に嫌いなわけじゃないのだ。
好意自体は、素直に、うれしい。
しかし、告白したりされたりなんて、自分からは何光年も遠い世界の話だと思っていたため、対応の仕方がわからない。
受け入れれば、もっと楽なのかもしれない。
誰か好きな人がいるわけでもない。
一生誰とも付き合わない気もない。
ただ、なんとなく、気恥ずかしかった。
「きっとさ。」
「うん。」
「なんか、次も受け取りそうな気がする、俺。」
「私もそう思う。」
「はぁ。なんで告白されたんだろう。」
「けっ。」
「はぁ。」
「はいはい、リア充おめでとう。」
「んー。」
緩慢だ。
体感する時間の流れは、すごく緩慢だ。
ドロドロと、体にまとわりつくような時間。
のろのろと、時間は進む。
ケーキを切る瞬間も、ケーキを口に運ぶ瞬間も、ケーキを咀嚼する瞬間も、しっかりと前進している。
そろそろ行こうか、という台詞を、純子も学も頭の中に思い浮かべていた。
すでに、ケーキも、紅茶も、話す内容もなかった。



さらに一週間後。
月日に同じ数字が並ぶこの日も、純子と学はこの喫茶店に来ていた。
いつもよりも少しだけ早い時間。
今日は箱で会う前に、直接ここで待ち合わせた。
先に来た学のコーヒーは二杯目。
入ってきたばかりの純子の前には、まだ飲み物は置かれていない。
注文はラベンダーティー。
いつもは置いていないのだが、今日はたまたま入荷があったのだという。
口に出しては言わないが、学は純子の小さな変化が気になった。
いつもは櫛で無造作に梳かれただけの髪が、今日はなんだか揃っている気がする。
気がするだけかもしれない。
間違いかもしれないので、触れない。

「はぁ、寒い寒い。」
「だねー。手袋とマフラーが手放せん。」
「ほんとだよ。今日とか特に寒くない?カイロ出そうか迷った。」
「俺は持ってきた。チャリ10分も漕いだら、寒すぎるわ。」
「私徒歩でも10分かからない。」
「いいよなー近くて。」
「まあ、近すぎたからこうなっちゃったわけなんだけど。」
「うん、まあねえ。」
「もうまじなんなのって感じ。」
「わかるわー。こっちは普通に仲良くしたいだけだっつーの。」
「そうそう、ホントよね。もうまじ酷いわ。」
「ほんとにねぇ。」
学の視線が純子に注がれる。
学の眼は、良く言えば力強い。悪く言えば冷たい。
ちょっと怖くて、でも安心もする。
普段はひょろひょろしてるけど、真面目な話もできるこの友人が好きだ。
「うん、まあね。最近ちょこちょこあったわけだよ。」
「うん。」
「でさ、こっちも慣れてくるわけじゃないですか。」
「慣れてきましたか。」
「ええ、それはもう慣れてきましたとも。今日はどうする?みたいな感じですよ。」
「うん。」
「で、まあ、一昨日もね、そんな感じでうちにきたわけですよ。」
「うん。」
「でね、いつもと同じよーに寝ようってことになって。
でもそこでね、急に、急に?いや、なんか話してる時に、床で寝るのがしんどいとかいいやがったのさ。」
「床で寝てたの?」
「そうそう。うち、予備の布団とかないし。
毛布だけあげて、床で寝てたのね。私はベッド。」
「なるほど。」
「でさ、ここが失敗だったんだけどさ。何もしないからそっちで一緒に寝かせてくれとか言われてさ。」
「まあ、ネタ的にキターとか思うよね。」
「でっしょ!そうなの、そうなのよ!おっけ、俺様モテ期キタコレとか思うわけじゃない。」
「うん、わかるわ。俺もそう考える。」
「だよね。でね、普通に一緒に寝たわけさ。」
「ベッドは広いの?」
「ううん。シングルベッド。私が部屋側で、あっちが壁側。
で、それぞれ反対向いて寝てたわけさ。・・・寝てたんだよね。・・・うん。」
「うん。」
「うん。ホントに寝てたから時間とかはよく分からないんだけど、なんとなく目が覚めたんだよ。
あ、どっちだろう、あっちが動いたから起きたのかも。まあ、そしたらですねー、いきなり抱きつかれたわけですよねー。」
「わけでしたか。」
「そうそう。一人パニック。で、起きたって言っても、ボワーっと目が覚めただけだったから、そのまま私フリーズ。
あっちも何もしてこないから良かったんだけど。さすがにマズイとか思って、頭の中超パニック。わーってなってた。」
「まあ、そうね。」
「で、まあ、それだけなんだけどね。
しばらくパニクってて頭ん中でアラーム鳴りっぱなしだったんだけど、しばらくしてたらまた寝てたみたい。
で、起きたときには離れてたから、そのまま何も知らないふりをしてた。」
「こうしてどんどん深みにはまっていくわけですね。」
「ちょっと黙れよ!(笑。ないよ。ないない。」
「ほんとに〜。」
「ないってば。もう絶対泊めたりしないもん。」
「そかー。あっちはどんな感じだったん?」
「朝?」
「うん。」
「いや、別になんも。普通だった。」
「そなんだ。」
「うんー。いやーでもなんだね。あれだね。焦るっていうか、困るっていうか。呼吸するのもしんどかったわ。」
「経験者は語る。」
「なに。」
「ごめん。なんでもない。」
「うん、まあ、そんな感じでした。」
「ありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ。」
「こうしてどんどん大人になって行くのね。」
「なんねーよ。もうしないし。」
「ホントに。」
「ほんとに。」
「そっか。」
「うん。」
「はぁ〜。怖いねぇ。」
「ホントにねぇ。」
「てか、よく起きたね。」
「そうそう。直前になんか察知したのかな。」
「女の勘?第六感だっけ?」
「なのかも。」
「まあ、何にもなくて良かったね。」
「だねー。怖い怖い。」
店の奥から、ラベンダーの香が漂ってきた。
甘く、柔らかい匂い。
ラベンダーの香りにはリラックス効果があるらしい。
「あ、私の話ばっかりだ。ごめんね。そっちもなんかあったんだっけ。」
「いや、こっちは別に大したことはないよ。」
「まあ、いいから話しなさい。」
「うん。ぬいぐるみ貰った。」
「おー、よかったじゃん。」
「うん。なんかね、雑貨や行った時に見つけて、俺の顔が浮かんだんだって。」
「うんうん。」
「小さな犬のぬいぐるみでさ。別にキャラクターものとかじゃないんだけど。ちっちゃいやつ。」
「うん。」
「確かに可愛かった。」
「よかったね。」
「うん。」
「・・・うん、よかったよかった。」
「以上、終わり。それくらいかなぁ、今回は。」
「そっか。」
「言い訳を言わせてください。」
「うん、聞くよ聞くよ。」
「基本的にいただけるものはいただけというのが、俺の生き方なのです。」
「うん。」
「以上。」
「うん。よし。聞いた。」
「貰うよねー。いや、前も言われた通り、貰わない方がいいんだろうけどさぁ。」
「なんか、実は学くんって、物でつられる人だよね。」
「うん。飴とかもらうと、ついていく。」
「はは。悪い人には気をつけて。」
「気をつけても付いて行くわ。」
入口のすぐ横の陽の当たるソファに座っていた、女子大生二人組が立ち上がった。
学はなんとなくそれを目で追う。
二人の会計をすますのと、純子のハーブティーが来るのと、どちらが優先されるだろうか。



それから一週間後。
もはや定番となったかのように、いつもの席に着く二人。
二人の予定が偶然一致した日は、いつの間にか二人の予定を一致させる日となっていた。
週末にはクリスマスがある。
講義も今週で終わるものが多い。
年末。クリスマス。
周囲は終息へと向かいながら、小さな興奮と活気に包まれていた。
そんな外界を遮断する厚い壁。
小さな商店の二階部分、外側にある階段を登った扉の中の遮蔽された世界。
そこには世の中の動きなんて気にしない、独自の王国が出来上がっている。
装飾も変わらない。メロディもかわらない。
メニューの半分は、店主の気分により味わえない。
今日はチーズケーキがなかった。
仕方なく、学はチョコレートケーキを注文する。
向かいでシフォンを注文した純子はそんな学を見て、クスリと、いや、ニヤリと笑った。
相変わらずチョコなんだ。目がそう告げている。
いいじゃんか、好きなんだ。そう思いながら睨み返す。
室内は暖かい。
客は点々と三人。
学生。OL。主婦。
実際は分からない。
学(と、純子もそう思ったらしい)の主観。
なんなのだろう。雰囲気。常識。そういったものからの、考察、直感。
「私は学くんに謝らないといけません。」
「よし、謝りなさい。」
「ごめんなさい。」
「よし、許す。」
「あ、よかった、怒られると思った。」
「こらー。」
「あ、すんません。」
いたって真面目な会話だ。
「土日で合宿あったじゃん。」
「福井なー。なんもなかったなぁ。」
「あったよ!眼鏡!」
「でも買わなかったじゃん。」
「だって、別にあそこで買わなくてもいいし。」
「素直やね。」
「まあ、福井で合宿あったじゃん。」
「うん。」
「その後ですよ。」
「合宿ではないのですか。」
「合宿ではないのですよ。合宿ではなにかありましたか。」
「・・・うーん。」
「あったんか!」
「ないといえばないし、あるといえばあるし。まあ、先にどうぞ。」
「う、うん、わかった。まあ、合宿が終わってからね、月曜だったかな、また連絡がきたわけです。」
「うん。」
「夜11時ころにメールがきて、箱で作業してたら遅くなったから、泊めてくれませんかと。」
「うん。あれ?でも、もう全員出したんじゃなかったっけ。」
「うん、そう。あ、締め切り守ってくれてありがとう。」
「いえいえ。」
「なんかよくわかんないんだけどね、そのへん。なんかしてたらしい。」
「うん。」
「で、前のこともあったし、学くんにもああ言ったし、今日は無理ごめんって返したわけさ。」
「うん。」
「そしたら、わかったじゃあ箱で寝るって返ってきたのね。
この時期だよ。箱だよ。死ぬよ!とか思っちゃったわけさ。」
「優しいねぇ。」
「そうそう。で、そんな私は律儀にも、死ぬよ!とか心配しちゃったのさね。
で、前のは一緒に寝たからいけないんだと思い、床だったらいいかと、ね、返信しちゃったわけですよ。」
「あーしちゃったかー。死亡フラグですね。」
「だよね。なんであんな返信したんだろう。」
「ビッチですね。」
「違う!ビッチじゃねえよ!」
「優しさか。」
「そう、優しさ。それそれ。」
「それで入れてしまったと。」
「うん。うちに来て、じゃあ寝るかーってなって。」
「おやすみなさい。」
「おやすみなさい。んで、こう、寝ちったわけですよ。」
「うん。」
「そしたらなんか寒いとか言い出して、そっちっていいとか聞かれて。
だめって言ったんだよ、だめって言ったんだよ。
でもなんか話しているうちに、じゃあ入ればいいじゃないみたいになって。」
「おめでとうございます。」
「ああぅ。あ、言っとくけど、大丈夫だからね。」
「なにが。」
「いやまあその、最後の一線はセーフと言うか。」
「おめでとうございます。」
「うっわ、むかつく。」
「んでまあそうなったと。」
「はいそうでしたすみませんでした。」
「いえいえどうも。」
「ほんと信じらんない。言ったんだよ。私だよって。こんなだめだめ人間だよって。
でもね、なんかね、好きなんだって。。。」
「ふーん、そっか。」
「うん。なんなんだろうね。」
「まあ、いいんじゃない。嫌いじゃないんでしょ。」
「そりゃまあ嫌いじゃないよ。嫌いじゃないけど好きでもないし、別に普通。」
「付き合ってあげるの?」
「一応断ったんだけど・・・。あー、もうわからん!」
「そっか。」
「・・・変なこと言っていい。」
「おう、聞いてやるよ。」
「これ全然えろい意味とかじゃなくてね。寒いじゃん。寒いからね。なんか、あったかかった。」
「うん。」
「・・・いや、それだけなんだけどね。」
「そうだね。あったかいよね。冬になると人恋しくなるっていうしね。」
「うん。人間カイロとか作ったら売れるんじ